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[ 2009年7月22日の皆既日食時の太陽コロナ形状の予測計算 ] [ English version of this page ]


MHDシミュレーションによる2008年8月1日の皆既日食時の太陽コロナ形状予測

太陽コロナは巨視的にみると亜音速・亜Alfvenicな状態にあるので、その(準)定常な状態を予測・決定するのは容易ではありません。そこで、MHDシミュレーションにより時間弛緩過程を解きもっとも安定した(低エネルギーの)状態を求めることで、定常コロナの三次元解を決定する手法が一般的です。
   状況を設定するために太陽の光球面磁場を境界値として導入します。ここでは SOHO/MDI から得られる磁場データに極磁場補正のみを施したものを使用しています。日食時予想では速報性は重要でないため、補正処理をすべて施したデータの方が良いわけですが、ここでは(準)リアルタイムの太陽コロナシミュレーションと同じデータを使っています。今このページにある図の計算には 7月19日の時点で得られたものを使っています。もう少し新しいデータを使った計算を8月1日までに一度はする予定です。
   図は計算された弛緩状態の太陽コロナのプラズマ密度を8月1日の地球の方向から視線積分したものです。そのままでは動径方向の勾配が大きすぎて太陽の近くだけが明るい絵になるので、Newkirkフィルタ関数とよばれるもので規格化してあります。太陽赤道近くに1ないし2本の高密度の構造が得られました。

高空間分解のシミュレーション計算
初期値はポテンシャル近似磁場。細かい磁場分布を取り込んだ計算を企図しているのでここでは数値的な弛緩法で初期値磁場の計算をしている。座標系は極座標系。緯度経度方向はだいたい1.5度、動径方向は可変で0.01から0.25太陽半径の間隔で分割。時間弛緩計算(実時間で概ね40時間)を完了するのに(8-CPUの計算機で)1週間程度かかってしまう。
8月1日皆既日食コロナ予測図
中心の球面 : 磁場構造の開閉
上下 : 天空の北南
8月1日皆既日食コロナ予測図
中心の球面 : 境界磁場の動径成分(赤:-,青:+)
上下 : 太陽の北南

中くらいの空間分解での計算
初期値のポテンシャル近似磁場は球面調和関数列の主値5までの項で計算。
8月1日皆既日食コロナ予測図
中心の球面 : 磁場構造の開閉
上下 : 天空の北南
8月1日皆既日食コロナ予測図
中心の球面 : 境界磁場の動径成分(赤:-,青:+)
上下 : 太陽の北南

低解像度の計算
初期値設定は中程度の計算と同じ。角分解能は5度ちょっと。ここまで格子数を減らすと大体6時間くらいで計算が完了するので、この計算と同一のコードを一日一回の (準)リアルタイムの太陽コロナシミュレーション でも使ってます。
8月1日皆既日食コロナ予測図
中心の球面 : 磁場構造の開閉
上下 : 天空の北南
8月1日皆既日食コロナ予測図
中心の球面 : 境界磁場の動径成分(赤:-,青:+)
上下 : 太陽の北南



上図をつくる際の視線積分によって太陽経度方向での構造がある程度平均化されてしまうため、格子数や入力データの空間スケールなどの計算設定の違いがあまり大きく表れない。



最終更新日 : 平成20年7月29日(文章など), 同7月27日(シミュレーション,結果の図)